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高気圧と低気圧

高気圧と低気圧は、それぞれ Hochdruckgebiet (n. -(e)s/-e) / Tiefdruckgebiet (n. -(e)s/-e) と呼ばれています。(ここではスラッシュを挟んで両者を並べています。以下も同様です。)それぞれの後半部分 Gebiet (n. -(e)s/-e) は「領域」を意味する言葉です。前半部分はそれぞれ正確には「高い圧力 Hochdruck (m. -(e)s/-e) 」 / 「低い圧力 Tiefdruck (m. -(e)s/-e) 」を意味する言葉ですが、しばしば気圧 Luftdruck (m. -(e)s/ ) の高い領域(高気圧)と低い領域(低気圧)のそれぞれを指して単独でも用いられます。さらに短く Hoch (n. -s/-s) / Tief (n. -s/-s) と呼ばれることもあり、天気図上では頭文字だけでそれぞれ H / T と表記されます。それぞれの気圧系が及ぼす影響は、 Gebiet のかわりに Einfluß (m. -flusses/-flüsse) 「影響」を付加して Hochdruckeinfluß (m. -flusses/-flüsse) / Tiefdruckeinfluß (m. -flusses/-flüsse) のように呼ばれます。 なお、高気圧や低気圧は、どれも固有の成因・構造を持ち、閉じた等圧線とその形状によって周囲からは多少なりとも独立しているとみなせる気圧システムですが、それらの両方を包摂する概念としては、 Druckgebilde (n. -s/-) もしくは Drucksystem (n. -s/-e) という語がよく使われます。これらは高気圧と低気圧の両方を区別なく指示できる、いわゆる上位概念 Oberbegriff (m. -(e)s/-e) です。どちらも日本語では「気圧系」「気圧システム」などの用語に対応すると思えばいいでしょうか、ざっくり「高・低気圧」と呼んでしまってもいい場合もあると思います。 一方、広範囲に及ぶ気流の回転方向に基づいた名称が用いられることもあります。その場合、低気圧は Zyklone (f. -/-n)

Synoptik 「総観気象(学)」

Synoptik (f. -/ 発音:ジュノプティーク、「ノ」にアクセント) という語があります。 語源はギリシャ語の名詞 σύνοψις (f. 発音:シュノプシス「共に ( σύν ) 観ること ( οψις ) 」) もしくは形容詞 συνοπτικός (発音:シュノプティコス「共に観ている」「全体を総括的に観ている」) などに由来し、語尾をドイツ語で学問分野を表す -ik という形にしたものです。日本語では「総観気象」もしくは「総観気象学」と呼ばれており、高気圧や低気圧、前線など、広範囲の天気図を作成することによって初めてその全体像が捉えられる規模(総観規模)の現象を扱う気象学の一分野です。学問名称としては、形容詞形を使った synoptisch e Meteorologie (f.) (字義:総観的な気象学)や、 Synoptikkunde (f.) (字義:総観気象の学問)という呼び方がされることもあります。 元来、気象観測で得られる気温や気圧などのデータはその地点のみの点的なものであり、雲の目視観測も、どんなに条件が良くてもせいぜい半径十数キロ程度の円内をとらえられる程度ですが、ある程度離れた複数の観測地点から同時に観測して、そのデータを突き合わせれば、より広範囲の現象を捉えることも可能になります。 昔は種々の気象要素の観測技術も未発達で、衛星画像はおろかレーダー観測技術すらなく、嵐は単にその土地土地の悪天現象としてしかとらえられていませんでした。地方ごとの天候や気候に対応していくために、長い年月をかけてその土地の住民が自分たちの経験則をまとめ上げたのが、「ことわざ」、いわゆる「天気俚諺(てんきりげん)」と呼ばれるものです。日本にも多くの天気にまつわることわざがありますが、ドイツにも Bauernregel (f. -/-n) 「農事金言」(字義:農夫の法則)というものがあり、その中でも、天候にまつわるもののうちのいくつかについては、統計的にも当たる確率が(若干ではありますが)高いことが分かっています。(詳細についてはドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Bauernregeln の項目の解説を参照のこと

予報文でしばしば用いられる語句、文表現

「予報する」「予報を作成する」 気象現象そのものを表す際にしばしば用いられる表現については 他のページ でも既に取り上げていますが、ここでは気象概況や予報文などでよく使われる表現を取り上げてみたいと思います。 まず、「予報する」意味を単純に動詞句で表現する場合は、名詞 Vorhersage (f. -/-n) や Prognose (f. -/-n) の動詞形 etw Akk vorher|sagen および etw Akk prognostizieren がそれぞれ使われます。なんらかの「予報を作成する」意味の場合は、予報を意味する上記の名詞などを目的語として、それと動詞 stellen 「立てる」や erstellen 「作成する」「組み立てる」を組み合わせた構文がしばしば使用されます。以下は erstellen による例文です。 Die heutigen Hochleistungsrechner ermöglichen es außerdem, mit dem gleichen Modell zur selben Zeit nicht nur eine, sondern mehrere Vorhersagen zu erstellen. とりわけ現代のスパコンによって、同一のモデルで同じ時間についての予報を一回だけでなく複数回行う(字義:一つだけでなく、複数の予報を作成する)ことが可能になった。 ドイツ気象局の気象ブログ Thema des Tages の2019年5月26日: Numerische Wettervorhersage - Ensemblevorhersagen zur Abschätzung der Vorhersageunsicherheit (数値気象予報―予報の不確実性評価のためのアンサンブル予報) より 自動詞 mit etw rechnen 「想定する」 さらに mit etw Dat rechnen という動詞句も予報文ではしばしば用いられます。動詞 rechnen は基本的には「計算する」という意味を持ち、他動詞用

気象予報

予報 ドイツ語で「予報」を意味する語としてまずあげるべきは Vorhersage (f. -/-n) 「予報」でしょう。しばしば Wettervorhersage (f. -/-n) 「気象予報」の形で用いられます。よく似た語に Wettervoraussage (f. -/-n) や Wetteransage (f. -/-n) があり、意味もほぼ同じですが、メディア上でも文献上でも、最もよく見かけるのはやはり Wettervorhersage (f. -/-n) です。「気象」以外にも、例えば Welle (f. -/-n) 「波浪」、 Pollenflug (m. -(e)s/-flüge) 「花粉の飛散」、 UV-Strahlung (f. -/-en) 「紫外線」、 Waldbrandgefahr (f. -/-en) 「森林火災危険度」などをはじめ、実に様々な種類の予報がいろいろな機関から発表されています。 Prognose (f. -/-n) も同様に「予測」「予報」の意味を持ちます。こちらはラテン語経由でギリシャ語まで遡る、いわゆる外来語で、他に医療用語で「予後(病気の今後の経過についての見通し)」などの意味もあります。科学的根拠に基づいた客観的な予測、という側面が強調される時に用いられやすい語のようです。気象の分野では、しばしば Wetterprognose (f. -/-n) 「気象予報」の形で用いられます。 他にも「気象予報」を表す語としては Wetterbericht (m. -(e)s/-e) 「気象通報」「天気予報」があります。直訳すると「気象の報告」になるため、私は最初、気象についての「現況」報告的な意味がメインかと思っていたのですが、試しにドイツ語のオンライン辞書サイト DUDEN Wörterbuch で Wetterbericht を引いてみると、 "(besonders in Presse, Rundfunk oder Fernsehen veröffentlichter) Bericht des Wetterdienstes über die voraussichtliche Ent