予報文でしばしば用いられる語句、文表現
「予報する」「予報を作成する」
気象現象そのものを表す際にしばしば用いられる表現については他のページでも既に取り上げていますが、ここでは気象概況や予報文などでよく使われる表現を取り上げてみたいと思います。
まず、「予報する」意味を単純に動詞句で表現する場合は、名詞 Vorhersage (f. -/-n) や Prognose (f. -/-n) の動詞形 etwAkk vorher|sagen および etwAkk prognostizieren がそれぞれ使われます。なんらかの「予報を作成する」意味の場合は、予報を意味する上記の名詞などを目的語として、それと動詞 stellen 「立てる」や erstellen 「作成する」「組み立てる」を組み合わせた構文がしばしば使用されます。以下は erstellen による例文です。
Die heutigen Hochleistungsrechner ermöglichen es außerdem, mit dem gleichen Modell zur selben Zeit nicht nur eine, sondern mehrere Vorhersagen zu erstellen.
とりわけ現代のスパコンによって、同一のモデルで同じ時間についての予報を一回だけでなく複数回行う(字義:一つだけでなく、複数の予報を作成する)ことが可能になった。
ドイツ気象局の気象ブログ Thema des Tages の2019年5月26日: Numerische Wettervorhersage - Ensemblevorhersagen zur Abschätzung der Vorhersageunsicherheit(数値気象予報―予報の不確実性評価のためのアンサンブル予報) より
自動詞 mit etw rechnen 「想定する」
さらに mit etwDat rechnen という動詞句も予報文ではしばしば用いられます。動詞 rechnen は基本的には「計算する」という意味を持ち、他動詞用法もありますが、予報文では通常は前置詞 mit (英語の with に相当)に与格名詞を伴った自動詞用法で用いられます。「計算する」というと、数値予報モデルがはじき出した具体的な数値を伴う予報(「〜ミリの降雨を予想する」など)をついイメージしてしまいますが、それよりはむしろ、一般的に「〜の現象が生じることをあらかじめ想定する/覚悟する」という意味で使用されることが多いようです。予報文では受動態 mit etwDat gerechnet werden (〜が予想される)や不定詞句 mit etwDat zu rechnen sein (〜が予想できる)の形で用いられることがほとんどで、あとは不定代名詞 man を主語に置いた能動文を時々見かける程度です。以下は受動態の例です。
Dabei muss zum morgendlichen Berufsverkehr erneut mit glatten Straßen und Behinderungen gerechnet werden.
その際、朝の出勤の移動にあたっては、再度道路の凍結と通行止めが起きるであろうことを想定しておかなければならない。(字義:滑りやすい道路と通行止めに関して新たに想定されなければならない)
ドイツ気象局の気象ブログ Thema des Tages の2019年1月30日: Wetterzweiteilung(二分された天気) より
このように、 rechnen はこの意味ではしばしば受動態で用いられ、しかも自動詞の受動態ですので基本的には主語の無い文になります。(一応非人称主語の es を文頭に置くことも可能ではありますが、他の文要素が文頭に来ると容易に落ちてしまうため、あまり見かけません。)このような自動詞を基にした、いわゆる非人称の受動態は、ドイツ語では決して稀な構文ではありません。下は不定代名詞 man を主語に置いた構文の例です。
Mit ziemlicher Sicherheit lässt sich aber festhalten, dass der Norden und Osten insgesamt anfälliger gegenüber Tiefdruckeinfluss sind, womit man dort vor allem zu Beginn der kommenden Woche mit zunehmender Niederschlagsneigung rechnen sollte.
しかしながら、それなりに確実に言えるのは、北部及び東部は総じて低気圧の影響を受けやすくなるだろうということであり、その際それらの地域では、とりわけ来週のはじめ頃にかけて、次第に雨や雪の傾向が強まることを心に留めておくべきであろう。(字義:次第に増加する降水の傾向に関して想定するべき)
ドイツ気象局の気象ブログ Thema des Tages の2019年3月19日: Niederschlagsarme Aussichten(少雨の見通し) より
不定代名詞 man は主語を明示せず動作のみを提示したい時に用いられるため、日本語では上記の訳文のように主語を言わずに済ますか、主語が具体的に分かっているならばそれを補って訳しても場合によっては OK でしょう。(ただし「人は」などとは訳さないようにしましょう。 man はあくまでも不定代名詞であって、具体的な「人」を表す語ではありません。)受け身的に訳されることも多いです。ドイツ語ではこのように、動作主をぼかしたり、行為や出来事そのものにのみ焦点を当てるやり方がいくつかあります。代表的なのが上の例のように受動態もしくは不定代名詞 man を用いるやり方ですが、下の例文の前半にあった、再帰動詞 sichAkk lassen にも似たような機能があります。使役動詞 lassen の用法は極めて多彩ですが、再帰代名詞 sich とともに用いられていたら、とりあえず支配されている不定詞句を、日本語の「れる・られる」のように「受け身」や「自発」、「可能」のように訳してみると意外とうまく解釈できたりします。
他動詞 etw erwarten 「予期する」
他には etwAkk erwarten 「予期する」もよく用いられます。これは一般的には「期待する」と訳されることも多い動詞で、能動、受動、いずれの態でも用いられます。なお、気象の意味で用いられる場合、特に受動態では予測される対象は必ずしも多くの人が「期待」するような現象ばかりとは限らないようで、ニュアンス的にはかなりニュートラルな表現のようです。以下は受動態での用例です。
UV-Warnungen werden herausgegeben, wenn absolut hohe Werte der UV-Bestrahlungsstärke erwartet werden.
紫外線警報は、予想される紫外線の放射強度の値が極端に高い場合に発令される。
ドイツ気象局紫外線警報 UV-Warnung のページより
警報が出されるレベルの紫外線強度を「期待する」人は普通あまりいないでしょう。
自動詞 aussehen 「見通しは〜である」
また近い将来の見通しについてざっくりとまとめる際は自動詞 aus|sehen 「見通しは〜のようである」もよく見かけます(名詞形は Aussicht (f. -/-en) 「見通し」)。
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