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天気の変化、安定・不安定

天気の変化 天気や天候の変化を表す動詞としては、 sich Akk verändern 「変化する」(名詞形: Veränderung (f. -/-en) 「変化」)や wechseln 「交代する」「入れ替わる」(自動詞・他動詞)(名詞形: Wechsel (m. -s/-) 「交代」)、 sich Akk ab|wechseln 「交代する」(名詞形: Abwechs(e)lung (f. -/-en) 「交代」)などがまずあげられます。以下は sich Akk ab|wechseln の用例です。 An der Ostflanke der Luftmassengrenze wird dagegen sehr milde Mittelmeerluft nordwärts geführt, in der sich Sonne und Wolken abwechseln und sich bevorzugt nachmittags einzelne Schauer und Gewitter entwickeln. [和訳:それに対して気団の境界の東側では非常に温暖な地中海の空気が北へと運ばれ、その中では晴れと曇り(字義:太陽と雲)が 交互に訪れ 、とりわけ午後にはところによりにわか雨や雷雨になるだろう。] ドイツ気象局の気象ブログ Thema des Tages の2019年4月1日: Auf erste Gewitterlage folgen Gegensätze (最初の雷雨の気圧配置に続いて天気は二分される) より ここでは晴れと曇りが交互に訪れることが「交代する」と表現されています。なお、後半の文では sich Akk entwickeln 「発達する」という動詞が使われていますが(名詞形: Entwicklung (f. -/-en) 「発達」)、これはここでは Schauer und Gewitter 「にわか雨と雷雨」の現象が発生し、発達することを表します。こちらも使用頻度の非常に高い動詞です。 また、天気が下り坂に向かい、次第に荒れてくると、...

Großwetterlage 「広域気象状況」「氾天候」

一定の気圧配置や気流は、ある程度の期間(最低でも数日以上)、同様の状態が持続することがあります。それらの気圧配置や気流の状況をいくつかの Muster (n. -s/-) 「型」に分類し、それぞれに固有の呼び名を付けたものが Großwetterlage (f.) です(提唱は Franz Baur )。日本でも西高東低型などの気圧配置が一般にもよく知られていますが、あれのヨーロッパ版と思えばいいでしょう。ドイツに留まらず、広く東ヨーロッパから北大西洋までを含む領域における対流圏中・下層の気圧配置や気流の状況などに応じてシステマティックに分類されています。 この語の後半の Wetterlage (f. -/-n) 「気象状況」は、狭い一地域で1日程度の短い期間、特定の状況があまり変化せず持続した場合に、その状況を表す言葉です。で、それよりも時間的、空間的にもっと大規模なバージョンということで、「大きい」を意味する groß- を前に付加した語が Großwetterlage です。なので、全体としては「大局的な気象状況」くらいの意味合いです。ただ日本語では定訳はまだ無く、小学館『独和大辞典』 (1985, 1990) を引くと「 広域気象状況、天気概況 」という訳語がありますが、研究社『独和中辞典』 (1996) では「 (広域・長期の)気象概況 」とあり、『平凡社版気象の事典』 (1986) では「天候」の欄に「 汎天候 」という呼び方があげられています (p.383) 。 一例をあげると、上空で偏西風が卓越する際には West-Wetterlage もしくは Westlage 「西風型」という語が用いられ、低気圧が地中海からポーランド方面へと北東進する気象状況では Vb 型( V はローマ数字の5)などが予報解説文などでもよく用いられます。 Großwetterlage についてはドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Großwetterlage のページに詳細な分類基準についてのリンクが貼られています。ドイツ気象局による過去及び直近の天候の分析結果は Leistungen 「業績」のカテゴリー中の ...

Klima 「気候」

Klima 「気候」 様々な期間にわたる長期的な傾向を扱う、いわゆる「気候」は Klima (n. -s/-s, -te) と呼ばれます。昨今では「気候変動」 Klimawandel (m. -s/ ) 、 Klimawechsel (m. -s/-) 、 Klimaänderung (f. -/-en) の形でしばしばメディアでも取り上げられる重要なキーワードにもなっています。 様々な時間スケールにおける Klima 一口に「気候」といっても時間的、空間的に様々な切り取り方があります。例えば仮にある地域である程度の期間、平年値から大きくそれた状態が観測されたとして、それが果たして「異常気象」に当たるのか、どの程度の「異常」( Anomalie (f. -/-n) といいます)なのかを論じる際には、まずは観測されたその気象要素の値を平年値と比較して、そこからの偏り、「偏差」 Abweichung (f. -/-en) を算出することが必要になります。その比較対象となる「平年値」( langjährig er Mittelwert (m.) もしくは vieljährig er Mittelwert (m.) )ですが、これには通常は30年間の範囲を参照期間として算出された値が用いられます。(研究目的によっては異なる期間を参照期間とすることもあります。)この参照期間のことを ( klimatologisch e) Referenzperiode (f.) といいます。通常は10年ごとに更新される30年値を用いるため、2021年からは、1991年から2020年までの30年間が参照期間となります。具体的には、平均値だけでなく、極値、さらには発生頻度や継続期間など様々な要素の平年値が算出されます。(詳しくはドイツ気象局 Wetterlexikon の Klima の項目を参照のこと。)なお、どの期間を参照期間とするか、どれくらいの幅を取るか、等々によって、同じ値であってもその偏りは当然ながら変わってきます。また近代的な気象観測が始まる前の昔の年代の気候を扱う、いわゆる Paläoklimatologie (f. -/ ) 「古気候学」においては、現代から...

広義の Wetter

Wetter (-s/-) という語は、専門用語としてはある一時点もしくはごく短い時間幅における具体的な気象現象を指して用いられるものですが、実はこの語には、狭義での「天気」にとどまらず、そのタイムスパンの長さに関わりなく、広く「気象」そのものを指して用いる用法もあります。(そのうちのいくつかについては 当ブログ でも既に取りあげています。)例えば、広く気象一般を扱った、いわゆる気象本のタイトルに使われる語としても Wetter はおそらく鉄板でしょう。専門用語としても、 Wetter は短期的な「天気」にとどまらず、例えば Wetterlage (f. -/-n) 「気象状況」(1日程度同じような気象条件が持続した場合に、その状態を指す語)や Großwetterlage (f. -/-n) 「広域気象状況」(もしくは「氾天候」:数日から数週間程度、広範囲で同様の気圧配置や気流の状態が持続した場合に、その状態を指す語)などの語においても用いられます。「気象学」 Meteorologie (f. -/ ) は、 Wetterkunde (f. -/ ) (字義:「気象の学問」)と呼ばれることもあります。これらの語における wetter- からは、「短期的な天気」としての意味合いは薄れているように思われます。 これと比べると、 Witterung (f. -/-en) 「天候」の方には、ある程度幅のある期間における大気の平均的な有り様を表す意味しかなく、短期的で具体的な「天気」の意味では使いづらいようです。つまり Witterung 「天候」は、使える期間などの縛りがある分指示範囲が限定的なのに対し、広義の Wetter にはそのような縛りはなく、「天気」から「天候」、さらに言えば Klima (n. -s/-s, -te) 「気候」まで、より広い範囲を指示しうることになります。言い換えれば、広義の Wetter は、狭義の Wetter 「天気」や Witterung 「天候」(やそれ以外の語)を包摂した上位概念 (Oberbegriff) である、ということになります。 と、少なくとも私はそう解釈しているのですが、...

Wetter 「悪天」「激しい気象」

「悪天」としての Wetter 辞書を引けば分かる通り、 wetter- で始まる複合語は多く、その意味も一般的な「天気」「気象」などが多いのですが、辞書記述をよく見てみると、これらの wetter- を冠した複合語の中には、「悪天」もしくは「激しい気象」と深い関わりを持つものも意外と少なくないことに気付きます。 例えば小学館の『独和大辞典[コンパクト版]』 (1985, 1990) には、 wetterbeständig (adj.) 、 wetterfest (adj.) 「風雨に耐える」(字義:「気象に対して安定した」)、 Wetterdach (n. -(e)s/-dächer) 「(雨よけの)差し掛け屋根、ひさし」(字義:「気象用屋根」)、 Wetterecke (f. -/-n) 「天候の悪い地域」(俗語、字義:「気象の片隅」)、 wetterhart (adj.)「多年風雨にさらされてきた」(字義:「気象に対して堅固な」)、 Wetterleuchten (n. -s/ ) 「稲光、稲妻、雷光」(字義:「気象光」。通常は夜間に雷鳴のほとんど聞こえないほど遠くの雷によって地平線近くの雲が明るく光る現象を指す。いわゆる「幕電」。)、 Wetterloch (n. -(e)s/-löcher) 「天候の悪い地域」(俗語、字義:「気象の穴」)、 Wettermantel (m. -s/-mäntel) 「レインコート」(字義:「気象用コート」)、 Wetterschaden (m. -s/-schäden) 「風雨による被害、風水害」(字義:「気象害」)、 Wetterschutz (m. -es/-e) 「防水(防雪、防風)設備」(字義:「気象防御」)、 Wetterseite (f. -/-n) 「(山・建物などの)風雨の影響を最も多く受ける側」(字義:「気象にさらされる側」)、 Wetterwolke (f. -/-n) 「雷雲」「暗雲」(字義:「気象雲」)などの一連の語が掲載されています(カッコの中は筆者による補足)。慣用句としても、 Ein Wetter zieht herauf. 「雷雲が近づいてくる...

日本語の「天気」・「天候」

「気象」 まずは日本語での基本的な語彙についておさらいしておきたいと思います。日本語で「 気象 」という語は、一言で言えば大気のあり様を指す言葉です。時間的、空間的に様々に異なる規模を持つ、大気中の諸現象や状態は全て気象という言葉で表すことができます。これは地震や土石流などの「 地象 」、川の氾濫や洪水などのような「 水象 」、太陽、月、惑星の運動などの「 天象 」、虹などの「 光象 」などと対立した、しかし密接に関連した概念です。 「天気」「天候」「気候」 加えて、気象は、どのようなタイムスパンで切り取って観察・記述するかに応じて異なった呼称が用いられることも多く、中でも特定の時点もしくはごく短い期間における具体的な気象現象は「 天気 」と呼ばれることがあります。例えば「天気予報」や「天気図」などは、全て特定の日時における具体的な気象状況を指し示すために用いられているわけです。これに対して、最低でも数日かまたはそれ以上の幅のある期間における平均的な大気の有り様は「 天候 」と呼んで、天気とは区別することがあります。またさらに長く、数十年もしくはそれ以上のスパンを持つ長期的な傾向については「 気候 」と呼ばれています。 もっとも、これらの用語の区別はあくまでも学問上の約束事みたいなもので、日常の言語使用においてはこの基準に当てはまらない用例も非常に多く見られます。例えば、上で「天候」という語は最低数日の幅のある期間の平均的な大気の有り様を表す、と述べましたが、実際には、 「昼休憩に入るのとほぼ同時に 天候 が急激に悪化したため、午後の行事は全て中止になった。」 などのような言い方は普通に可能ですし、違和感もほとんどないというか、むしろこの文に限っては「天気」の方が逆に使いづらい、という人すらいるかもしれません(「天気」はおそらく、「急に悪くなったので〜」のように和語風の表現にすればもっと使い易くなるでしょう)。 一般的な単語が意味を限定させて専門用語としても用いられるというのは、実は日本語でもドイツ語でも学問分野を問わずしばしば見られる現象です。ただ、それは実際にはそれぞれの学問分野ごとに「この語は専門用語として使う場合にはこういう意味で使いましょう」と取り決めて使っているだけなのであ...