Wetter 「天気」


Wetter および wetter- で始まる複合語

狭義での Wetter (n. -s/-) は、ある地点における特定の一時点もしくはごく短いタイムスパンで観測される具体的な大気の状態もしくは現象を指して用いられます。複合語の一要素としても、例えば Wettererscheinung (f. -/-en) 「気象現象」、 Wetterbeobachtung (f. -/-en) 「気象観測」、 Wetterbericht (m. -(e)s/-e) 「気象通報」、 Wetterdienst (m. -es(-s)/-e) 「気象業務」「天気相談所」、 Wetterkarte (f. -/-n) 「天気図」、 Wettersatellit (m. -en/-en) 「気象衛星」、 Wetterwarte (f. -/-n) 「測候所」、 Wetterhütte (f. -/-n) 「百葉箱」など、実に様々な語との組み合わせが辞書には掲載されています。気温、湿度、気圧、風向、風速、雲量、日射、降水量等々、気象と関係の深い物理量を指して Wetterelement (n. -(e)s/-e) 「気象要素」ということもあります。


「気象現象」

「気象現象」については、上であげた Wettererscheinung 以外にも Wetterphänomen (n. -s/-e) という言い方もあるのですが、こちらはラテン語を介して古典ギリシャ語にまで遡る外来語 Phänomen (n. -s/-e) 「現象」との組み合わせになっています。他にも meteorologische Erscheinung (f.) とか meteorologisches Phänomen (n.) などのように、 Wetter を使わず「気象(学)の」を意味するラテン語由来の形容詞を使う言い方もよく目にします。これらは大気中の諸現象を動的過程、静的状態を問わず普遍的に表現できる語です。これに対して Wettergeschehen (n. -s/-) や Wetterereignis (n. -nisses/-nisse) などの言い方もあるのですが、こちらはある現象が発生したり、ある場所の気象になんらかの変化や動きがあった場合に、その現象そのもの、もしくはその推移を指して用いられているようです。あえて訳せば、「気象現象の発生」もしくは「天気(天候)の成り行き」といったところでしょうか。必ずしも専門用語というわけではないようですが、いずれもよく見かける表現です。


Wetterküche

他にも、変わったところでは Wetterküche (f. -/-n) という語があるのですが、これは直訳すると「お天気キッチン」となります。辞書には載っていない単語なのですが、気象ブログなどでは時々見かけます。天気の変化が激しく、活発な低気圧や前線、高気圧などがひしめき合って天気図がにぎやかになっている時に、それを様々な食材や調味料、調理器具が所狭しと並んでいるキッチンに例えた言葉なのではないかと思われます。さすがに公式の天気概況文や予報文には出て来ませんが、ヨーロッパ各地で低気圧や前線が活発化して天気図が大きく様変わりすることが予想されている時には、一般向けの気象関連記事などで時々この語を使って解説しているのを見かけることがあります。


Wetterfrosch

Wetterfrosch (m. -es(-s)/Frösche) は、直訳すると「お天気ガエル」、早い話がアマガエルのことです。昔、アマガエルは地面からどれくらい高い位置に上るかによって天気を予知することが出来る、という俗信がありました。日本にも「ツバメが低く飛ぶと雨」などのことわざがありますが、あれと同様の発想かもしれません(高さは逆ですが)。かつてはこのアマガエルを足場になる木切れと一緒にガラスの容器に入れておき、その中でどれだけ高く登るかを見て天気予報に役立てようとした、などという逸話も残っています。ただしこれは実話ではなく、単なる言い伝えというか、あくまでもドイツ人にとっての、いわば定番の気象ネタの一つ、くらいの位置づけの話のようです。日本にも「カエルが鳴くと雨」ということわざがありますが、ドイツ人はさらに踏み込んで、鳴く高さにまで着目した、ということなのでしょうか。なお、この語はここからさらに転じて、(男性)予報官や「天気予報マニア」のことを揶揄する俗語としても用いられるようになったようです(詳細はドイツ語版 Wikipedia, Wetterfrosch の項目を参照のこと)。


Wettersäule

また、かつては Wettersäule (f. -/-n) というものがあって、街の中央部の人が集まる場所に設置されていたのだそうです。これは直訳すれば「気象の柱」になりますが、ガラス張りの柱状の構造物の中に温度計、湿度計、気圧計、風向風速計などの設備が内蔵されており、リアルタイムでその時々の気象状況を市民に知らせる役割を果たしていたようです。(詳細はドイツ語版 Wikipedia の Wettersäule の項目及びドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Wettersäule の項目を参照のこと。実物の画像もこれらのリンク先で見られます。)ドイツでは昔から市民レベルでも自然科学に対する関心が高かったことを示す一例かもしれません。

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