はじめに


当ブログの目的

当ブログでは、ドイツ語で新聞の気象概況文や予報文を読んだり、ドイツ語のサイトでいろんな地域の天気について調べたり、ドイツ語の気象ブログを読んだりする際によく見かける表現をトピックごとにまとめていこうと思います。


最近では、天気予報文に限らず、特に電子メディア上の情報であれば、翻訳アプリを使えばその言語を知らなくてもとりあえずは「読む」ことが可能ですが、それでも訳文に要領を得ない箇所がある場合には、原文にあたって調べる必要も出て来るかと思います。また新聞や雑誌などの非電子メディア上の情報であればなおのこと、辞書等を使いまくってああでもないこうでもないと悪戦苦闘しながら読んでいくこともあるかもしれません。そういった際の一助となるよう、自分の勉強も兼ねてこのサイトを立ち上げました。やたらと文字が多くて読みにくいページになるとは思いますが、お役立ていただけるならば幸いです。


自動詞 für etw sorgen

早速ですが、ドイツ語で書かれた天気予報文や気象関係の文章を読んでいると、以下のような文にでくわすことがよくあります(下線は当ブログ筆者)。


Warmes Mittelmeer und anhaltend meridionale Strömung sorgen für extremen Starkregen in Südfrankreich und Norditalien.
[和訳:温暖な地中海と南から吹き続ける気流のために南フランスと北イタリアでは豪雨になっている。]
2014年11月18日のドイツ気象局の報道資料のタイトルより


Neue Wettersatelliten sorgen für genauere Wettervorhersagen.
[和訳:新型の気象衛星のおかげで気象予報がより正確になっている。]
2015年4月19日のドイツ気象局の報道資料のタイトルより


下線の引かれている動詞句 für etwAkk sorgen は、本来は「…を気にかける」「心配する」「世話する」を意味し、英語であればおよそ care for ... くらいの語句に相当する表現ですが、そう解釈しようとすると上のような例ではかえって意味が通じなくなります。ここでは「〜のせいで…のような状況になる」「〜によって…のような状況が発生する」などのような、ざっくりとした因果関係を表現するために用いられています。上の文なら「温暖な地中海+南から吹き続ける風」⇒「豪雨」、下の文なら「新型の気象衛星」⇒「より正確な気象予報」のような因果関係です。この意味では、これらの文のように必ず前置詞 für +対格名詞を伴って用いられます。矢印の左側が主語、右側が前置詞 für を伴った前置詞句で表されます。


これらの例における sorgen には、日本語での「心配する」「世話する」などに見られるような情緒的ニュアンスはほぼありません。初学者にとっては、辞書を引きながら予報文を読んでいて、なぜここでこんな意味の単語が、と、とまどってしまう動詞の代表格だろうと個人的には思っていますが、使用頻度は非常に高いので、読み続けていれば割とすぐに慣れてしまう動詞でもあります。


ちなみに通常のハンディタイプのドイツ語辞書で sorgen を引くと、研究社の『独和中辞典』 (1996) に etw1 für etw4 の構文で「(事1が事4を)引き起こす」「(事1の結果が事4)になる」という意味の項目が立てられていて、そこには以下のような例文が載っていました。


Der tagelange Regen sorgte für Hochwasser.
[和訳:数日続いた雨が洪水を引き起こした。]
(『研究社 独和中辞典』 (1996) p.1270. )


この動詞の解説にこのような気象の分野での使用例を載せている独和辞典は、少なくとも私が学生時代に出版されていた入門者向け独和辞典には無かったように思います。実際、これは天気概況文や予報文を読んでいれば必ずと言っていいほど目にする動詞なので、その意味が辞書に載っていないというのは、学習者にとってはなんとも困ったことでした。


なお、これより昔の辞書だと、さらに10年ほど前に出版された郁文堂の『独和辞典』 (1987) にもほとんど同じ例文が載っていました。


der lange Regen sorgte für Hochwasser.
[和訳:長雨が洪水を惹き起した。]
(『郁文堂 独和中辞典』 (1987) p.1315. )


こちらの例文では形容詞 tagelange の部分は単純に lange 「長い」となっており、訳も「長雨が〜」となっています。試しにネット検索で der lange Regen を調べると、まず小説のタイトルがヒットするのですが、それ以外にも「長雨」という意味でこのフレーズを使っている例はそこそこヒットするため、一応こちらも可能な言い方ではあるようです。ただ、正直な話、少なくとも気象情報を扱った文ではあまり見かけません。長雨は通常は Dauerregen (m.) (字義:持続の雨)とか、lang andauernder ( もしくは anhaltender ) Regen (字義:長く持続する雨)などのように呼ばれることの方が多いように思います。なお、日本では長雨というと、あまり降雨強度が大きく変わることもなく広範囲でしとしとと降り続く、いわゆる「地雨(じあめ)」のことを思い浮かべる人が多いと思いますが(実際ドイツ語にもほぼ同じ意味の Landregen (m.) という語があります)、上記の Dauerregenlang anhaltender Regen は、単に「長く降り続ける雨」ということしか意味していないため、地雨にとどまらず、極端な話、狭い範囲で「長時間降り続ける」集中豪雨に対しても使おうと思えば使える表現です。


当ブログでは、こういった表現を含め、ドイツ語で天気予報文や気象に関係した記事、ブログなどを読んでいく時によく目にする表現や、役に立ちそうな知識を折りに触れ取り上げていければと思っています。

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